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目指せ!国立!〜激闘 静岡編〜

静学、惜しくも準優勝/全日本ユース

<第7回>
全日本ユース選手権決勝 市船橋対静岡学園 静岡学園DF小林(左)は市船橋FWカレンと激しく競り合う
全日本ユース選手権決勝 市船橋対静岡学園 静岡学園DF小林(左)は市船橋FWカレンと激しく競り合う
 高円宮杯第14回全日本ユース選手権に2年ぶり3度目出場の静岡学園(東海2位)は、決勝で市船橋(関東1位)に0−1で敗れ初優勝を逃した。しかし00年全日本ユース選手権優勝の清水商以来となる、静岡県高校勢の全国大会決勝進出を果たした。1次ラウンドは市船橋、G大阪ユース(関西1位)、鹿児島城西(九州1位)が同居する「死のグループC」に入り、一時は自力突破が不可能となった。しかし、危機を乗り越え進出した決勝ラウンド準決勝では、優勝候補筆頭の広島ユース(中国1位)を撃破。目標の選手権に向けて着実に成長した。




  OBの柏DF永田のエールに士気上がる


 初戦の1次ラウンド第2戦で、司令塔のMF狩野健太(2年)を累積警告で欠いたことが響き、0−2と完封負けした市船橋との再戦を選手は心待ちにしていた。それは単なるリベンジという思いではなかった。1次ラウンド最終戦で鹿児島城西と引き分け、自力での決勝ラウンド進出は不可能となった。唯一の可能性は、G大阪ユースの市船橋戦敗戦のみ。そんながけっぷちの状況を、市船橋は逆転勝ちというドラマチックな形で救ってくれた。

 「市船には借りがある。決勝で借りを返したいです。このチャンスを生かさないのは、もったいないですよ」。MF松下幸平主将(3年)の言葉は、選手全員の思いだった。市船橋対G大阪ユース戦の途中で、一度は柏の葉競技場を後にしようとした井田勝通監督(61)も「神様がいたということ。決勝ラウンドでは100%攻撃的に、精一杯やるよ」と笑みを浮かべた。

 そして静学にはもう1つ、大きなバックアップがあった。鹿児島城西戦前日の10月3日、2年前の全国選手権で主将としてチームを率いた、OBの柏DF永田充(20=柏)が、初のフル代表に追加招集されたのだ。U−20代表から五輪代表を飛び越しての、先輩の「2階級特進」の快挙に全員が沸いた。その夜、陣中見舞いに訪れた永田から「君たちにも、まだまだ伸びるチャンスがあるから頑張って欲しい」という熱いエールを受け、恥ずかしい結果を残すわけにはいかなくなった。

 10月5日の準々決勝では、全国総体8強の鵬翔(九州4位)と対戦。鹿児島城西戦で機能しなかった1ボランチを、加藤僚、山梨純平(ともに3年)のダブルボランチに変えた3−5−2の布陣は、中盤の厚みがグンと増した。序盤から、多彩なパス回しで試合を優位に進めると、後半26分左サイドを突破した狩野が、右足で今大会2点目を決めた。さらに32分には松下がヘッドで大会初ゴールを決めダメ押し。先輩・永田が率いた2年前の全国選手権1回戦で1−3と敗れた鵬翔を返り討ちにした。


  優勝候補広島ユースに競り勝つ!


 高校サッカーの夢舞台・国立競技場に、97年全国選手権以来6年ぶりにたどり着いた静学。目標の決勝まであと1つ…しかし目の前に立ちはだかったのは優勝候補筆頭・広島ユースだった。1次ラウンドで帝京(関東2位)を6−0、東福岡(九州3位)を5−0と連破。準々決勝でも3連覇を狙った国見(九州2位)を1−0完封と、3トップを軸に圧倒的な攻撃力で勝ち上がってきた。

全日本ユース選手権準決勝 静岡学園対広島ユース 静岡学園MF松下(右)は、広島ユースMF高萩をかわし、強烈なシュートを放つ
全日本ユース選手権準決勝 静岡学園対広島ユース 静岡学園MF松下(右)は、広島ユースMF高萩をかわし、強烈なシュートを放つ

 しかし静学イレブンの「打倒、市船」への思いが今季最高の試合を生み出した。序盤こそ広島3トップに押し込まれたものの、加藤と山梨のダブルボランチが、この日も冷静かつ大胆なプレーで中盤でリズムを作る。そしてチーム最小兵157センチの右ウイング中村友亮(2年)が、積極的な上がりで、中央の狩野にボールを供給し、徐々に主導権を奪っていった。

 そして後半35分、狩野の右CKに松下が思いきり飛び込み、得意のヘッドでゴール左隅に決勝弾をたたき込んだ。鵬翔戦に続く連発に、右手人さし指で「1番ポーズ」を作り、松下は国立のピッチを、メンバーの待つベンチに向け疾走した。「練習通りのいいボール…当てるだけだった。ぼくらは挑戦者として、気持ちだけは負けずに静学サッカーしようと臨みました」。

 U−18代表DF小林祐三(3年)も完勝に胸を張った。「今回の完封は納得できた。気持ちもプレーも全部勝ったと思っています」。代表合宿に国体と、ハードスケジュールで蓄積した疲労に加え、仙台杯で痛めた左足首、そして今大会中には右足内転筋をも痛め状態は最悪だったが、笑みがこぼれた。


  雨の決勝戦、「打倒市船」の思い叶わず…


 10月13日、待ち望んでいた市船との再戦に約束通りたどり着いたイレブンの表情には、闘志がみなぎっていた。決勝の舞台・埼玉スタジアムは、あいにくの雨模様。96年全国選手権以来となる全国大会決勝は、はからずも当時を思い起こさせるような激しい雨が降りしきる中、キックオフの笛が鳴らされた。

全日本ユース選手権決勝 市船橋対静岡学園 静岡学園FW木戸(左)は、市船橋DF増嶋に止められる
全日本ユース選手権決勝 市船橋対静岡学園 静岡学園FW木戸(左)は、市船橋DF増嶋に止められる

 初戦を欠場の狩野に加え、鹿児島城西戦の審判への激しい抗議で準々、準決勝の2試合を出場停止処分となったFW横山拓也(3年)も先発。フルメンバーが結集し、静学は前半から攻勢をかけた。中盤の厚みを増した3−5−2の布陣で、アップテンポなパス回しを展開、積極的にシュートを放つ。27分横山が左から強烈なシュートを放つも、右ポストを直撃。2分後には中央から山梨がミドルシュートも、わずかに枠をそれゴールはならなかったが、完全に主導権を握った。

 しかしその直後、試合は大きく動いた。31分、DF平島大介(3年)のクリアボールを、ペナルティエリアに詰めた市船橋FWカレン・ロバート(同)に右足で豪快に蹴りこまれた。小林が飛びかかったが一歩遅れ、ボールは小林のスパイクをかすめゴールネットに突き刺さった。思わず天を仰ぐ静学イレブン。しかし、すぐに気持ちを切り替え再び攻勢に転ずるその姿には、15日前に完敗を喫した面影はかけらもなかった。

 2得点でチーム得点王のFW木戸吾郎(3年)を後半投入、局面の打開を図ったが、そんな静学の狙いをあざ笑うかのように、雨脚がさらに激しさを増した。踏みしめた芝から水がわき出るほど、ピッチ条件は加速度的に悪化の一途をたどり、木戸のドリブルも、普段のスピーディーで飛び回るような華麗さは影を潜めた。ボールが水に取られパスが回らなくなり、攻撃にかける時間が徐々に、確実に減らされていった。

 それでも、静学イレブンは最後まであきらめなかった。ロスタイム1分34秒過ぎ、木戸の右クロスに横山が思いきり飛び込みヘディングシュート。GKがはじいたが、さらにそこに松下が飛び込む。しかしあと一歩、いや半歩ゴールには届かなかった。試合終了のホイッスルの中、勝ち誇る市船の横で、静学イレブンは力尽きたようにピッチに視線を落とした。


  松下「この悔しさを選手権で晴らしたい」


 シュート数17−6の数字からも、主導権を握り続けたことは明らかだった。しかし井田勝通監督(61)は敗戦を認め淡々と、そして厳しく試合を振り返った。

 井田監督 「1発のシュートを止められず、相手のDFを最後まで崩せなかった。3回くらいはビッグチャンスを作ったが…選手権に向け1点を取る厳しさは必要。市船はこぼれ球を決めて、うちは決められなかった。勝負の世界は厳しい。上に行けば行くほど、チャンスは少ない。ましてや決勝で1点取り、取らせなかった市船は素晴らしい。自分たちのサッカーをして1点取れなかった悔いは残る。リフレッシュして、選手権で再度挑戦です。」

 市船橋への表彰が続くスタンドを背に、松下は一足早く手渡された賞状を抱え、うずくまった。他のイレブンがスタンドを悔しそうに見つめても、最後まで視線を反対側のスタンドにそらしたままだった。

 松下 「自分たちがあそこに立つべきだった…あれだけいいサッカーをしたのに、何で負けたんだろうと。この悔しさをバネに選手権を戦いたい。市船も運良く高校生。他県より静岡は激戦だし、気は抜けませんが、必ず静岡の王者になり、選手権は市船に勝ちます。」

 7年ぶりの全国一はならなかった。しかし、聖地・国立では殊勲の勝利を挙げた。それでも静学イレブンにとって、選手権での国立勝利こそが、真の悲願。冬の熱い戦いは、目前に迫っている。【村上幸将】

高円宮杯全日本ユースで準優勝した静岡学園イレブン
高円宮杯全日本ユースで準優勝した静岡学園イレブン


 
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