ホーム > 高校サッカー2006 > 全国高校選手権特集 > 東北勢40年ぶり盛岡商優勝/高校サッカー

<高校サッカー:盛岡商2-1作陽>◇決勝◇8日◇東京・国立競技場
みちのくの無名少年たちが3893校の頂点に立った。盛岡商(岩手)が初の決勝で2-1で作陽(岡山)を破り、15回目の出場で初優勝を飾った。PKを外したFW林勇介(2年)が、FW大山徹(3年)の好クロスから同点ゴールを決めて息を吹き返し、鮮やかな逆転勝ち。東北勢の優勝は66年度秋田商以来40年ぶり、首都圏開催の76年度以降は初めてになる。冬は雪でグラウンドが使えないハンディを乗り越え、指導歴37年目の斎藤重信監督(59)が夢を達成した。
林が真っ先に斎藤監督のもとに駆け寄った。ピッチで天国と地獄を経験した16歳の少年が、誰よりも勝利を報告したかった恩師に抱きついた。「信じられない。本当に優勝したんですよね?」。県大会決勝前に、監督の指示を守らず丸刈りにされた童顔が、笑みと涙でグシャグシャになった。
1点を追う後半19分、PKを外した。心臓が凍りつく思いだったが、同監督から「顔を上げろ。落ち着いていけ」と言われると、不思議と楽になった。7分後にFW大山の絶好の左クロスを力んで空振り。周囲は「またか」と天を仰いだが、本人は「焦りはなかった」。転がる球に向かってくるGKより一瞬早く、左足を届かせた。PKから数えて三度目の正直は、仲間を勇気づける同点弾。「これで帳消しとは思わなかったけど、運がありました」。逆転劇を呼び込んだ。
大山は恩師の温情に応えた。動きが緩慢だった準決勝の八千代戦後、同監督から「おまえは使わない」と通告された。練習で必死の姿を見せるしかなかった。後半25分に投入され、1分後には左サイドを切り裂き、林へのピンポイントのクロス。「先生は怒るときも笑うときも本気で接してくれる。体のこともあるし、優勝させてあげたかった」。みるみる目が潤んだ。
早い年は11月から雪が降り、室内練習に移る。ピンチはチャンス。狭い室内でのフットサルなどで個人技を磨いた。雪のグラウンドでは、短くて5キロ、長くて20キロをひたすら走り続けた。DF藤村主将は「室内でやったことで状況判断が速くなった。90分間走れる自信もあった」と雪国ならではの逆転の発想を強調した。
監督と選手との強い絆(きずな)とアイデア。どこにでもいそうな少年たちが、みちのくに一足早い春を運んできた。【栗田文人】