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<高校サッカー:盛岡商2-1作陽>◇決勝◇8日◇東京・国立競技場
待ち続けた全国制覇の瞬間にも、涙はなかった。斎藤監督は「本当にうれしいの一言。みんなを呼び付けて、キスでもしてやりたかったよ」とおどけた。1点を追い、PKを失敗する悪い流れでも、冷静だった。後半25分に投入したFW大山がわずか1分で同点弾をおぜん立て、采配もズバリと当たった。指導歴37年目の洞察力だった。
試合前に「勝っても負けても、絶対に泣くな。勝ったら大いに笑え。負けたら笑いながら、拍手で作陽をたたえよう」と選手を送り出した。92年に喉頭(こうとう)がんを患い、手術で声帯の半分を失っている。そのかすれた声で90分間指示を送り続けた。遠くの選手には手ぶり身ぶりだけで心が伝わる。昨年11月に冠動脈血栓で、再び大手術を受けたが、ぎりぎりまで選手に知らせなかった。そんな斎藤監督の前で、イレブンはどんな逆境にも、下を向けるわけがなかった。
選手の「父親」だ。私生活にも目を配る。「制服のパンツを腰の位置ではいたり、シャツを出したら、1度目は注意するが、2度目はどんなうまい選手でも試合に出さない」が持論。生徒を自宅に呼んで世間話をし、悩み事を抱える生徒とは解決するまで話し合う。「今は何でもお金で得られる時代。歯を食いしばって、つらい思いをして生まれる達成感。人を思いやる気持ち。そういうことを教えたい」が口癖だ。
37年間、親子の関係を築いてきた監督のもとには、今でも多くの卒業生たちが慕ってくる。延べ2000人の教え子からの後押しを受けての栄冠でもあった。予定していた胴上げは「心臓が裂けちゃうから断った」が、斎藤監督の心は、国立の空高く舞い上がった。【栗山尚久】