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市船橋日本一!小川30メートルゴール

<決勝:市船橋1−0国見>
 市船橋(千葉)が、高校サッカー史に残るロングシュートで全国の頂点に立った。戦後初の3連覇を狙った国見(長崎)との決勝戦。後半20分にMF小川佳純(よしずみ=3年)がFKからのこぼれ球に走り込み、30メートルの弾丸シュートをゴール左隅にたたき込んだ。絶対的なストライカー不在、全員攻撃のチームカラーを象徴する1点を守り切り、市船橋は99年度大会以来3年ぶり4度目の栄冠を勝ち取った。

 国立競技場を埋めた約5万大観衆も度肝を抜かれた。後半20分。FKのこぼれ球が、ペナルティーエリアの外で待つ小川の足元へ転がる。迷いはない。ボールの3バウンド目、上がりっぱなを右足で振り抜く。国見GK関の予想を超えて球速は増した。左腕のパンチングの数ミリ上をすり抜けてさらに上昇カーブを描き、ゴールの左奥へ突き刺さった。

 小川はシュートの軌道を目で追いながらぼう然とした。「自分でも信じられない。まるでスローモーションを見ているようだった」。大歓声で自分を取り戻すと、喜びがこみ上げる。右手人さし指を突き上げながら仲間のもとへ駆け出した。距離約30メートルのロングシュートが、国見の3連覇を打ち砕いた。

 チームは国見の厳しいマンマークに苦しみ、前半のシュートはわずか2本。最終ラインを上げても逆にカウンター攻撃を食い、布監督から「自信を持て。攻撃は必ずシュートで終わること」と指示を受けた。後半2分、MF鈴木のロングシュートがバーを直撃。このとき小川に「浮かさずに蹴る。それだけを意識してゴールを狙う」というイメージができていた。

 身長は171センチで代表歴もない。2年間は控えで出場機会も少なかった。体育科の選手が多い中、レギュラーではただ1人の普通科。学業でも43人のクラスで常にトップ3に入っている。レギュラーは遠いと思ったこともあった。だが「3年前に市船橋の優勝を見て、必ずここで全国制覇したいと思った」。夢を果たすため、連日居残りでキック力と正確性に磨きをかけた。昨夏の高知国体に千葉県選抜として出場し、全国優勝。ようやく努力が実り始めたばかりだった。

 今大会も右サイドで前線には上がるが、U−19日本代表DF大久保のオーバーラップで空いたスペースを埋める地味な役割をこなしてきた。国見は今大会4得点の左サイドMF石川を徹底マーク。無警戒の小川だからこそ拾えたこぼれ球、決められたロングシュートだった。市船橋はチーム全16得点のうち半分の8得点をMFで決めた。小川の歴史的な大会2ゴール目は、絶対的なストライカー不在でも全員で勝ち抜いてきた市船橋を象徴していた。布監督は「小川は本当によくやってくれた。うちらしい勝ち方」とたたえた。

 小川は明大商学部へ進学する。広島内定の大久保、G大阪入りするDF青木に後れはとったが「新たな気持ちで頑張りたい」と4年後のプロを目指す。ヒーローは右足の感触を一生の財産に、新たなサッカー人生を踏み出す。【山下健二郎】

 布監督は挫折をバネに、ついに国見を倒した。16年前に受けた衝撃は、鮮明に脳裏に刻み込まれている。初めて国見と対戦した86年度大会で、0−5で大敗した。FW出身の布監督は、その試合を契機にDFの重要性をあらためて認識し、守備強化を第1にチームを鍛え上げてきた。選手権での対決はその時以来。17年越しで国見の小嶺総監督に恩返しした。

 準決勝後の5日間で国見対策を講じた。長身平山に対するマーク、セカンドボールの処理、マンマークへの対処、決勝前日のシュート練習。すべてが大舞台で発揮された。「DFライン全員が国見のパワープレーを封じたのが勝因。80分間を0点に抑えられてうれしい」と布監督はDFの勝利を強調した。

 大久保主将は「3年前の市船橋の優勝を国立で見て夢をもらった。布監督のライフ・イズ・チャレンジ(人生は挑戦)を心に刻んでやってきて良かった」。20年間にわたり指揮を執ってきた布監督の信念が実を結んだ。

 ◆市立船橋高校 1957年(昭和32年)創立。サッカー部は翌58年に創部され、高校総体でも4回の全国優勝を誇る。OBに北嶋秀朗(清水)西紀寛(磐田)らがいる。男女駅伝、男子バレーも過去に全国制覇している。水泳の鈴木大地氏、マラソンの鈴木博美さんも卒業生。所在地は船橋市市場4の5の1。草野仁一校長。生徒数1202人(女子638人)。

 ◆小川佳純 おがわ・よしずみ。1984年(昭和59年)8月25日、東京都世田谷区生まれ。富士見ケ丘小3年から三菱養和SSでサッカーを経験。中3時にFW、MFとして、クラブジュニアユース大会でベスト8入り。家族は両親と弟。171センチ、63キロ。血液型O。

写真=後半20分、市船橋MF小川(手前)は30メートルの決勝ゴールを決める(撮影・たえ見朱実)


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